ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

きょうを惜しむ

たまに、きょうを惜しむように夜更かしする夜があります。

明日があるのに飲み会で深酒したり、肌荒れするとわかっているのに化粧をおとさずに寝たり、いけないとわかっているのにせずにはいられないこと。わたしにとって、夜更かしはそれでした。

 

たとえば、心惹かれる映画を見た夜。

ミニシアター系のその映画は、90分あまりの上映時間で、平日の夜を過ごすにはぴったりでした。高校生の日常を描いたドラマ。鮮やかな色合いと美しいフォントタイトルのパッケージが印象的でした。

 

物語は、思うほどわたしの心を揺さぶりませんでした。理解はできるけれど、共感はできない。美しいけれど、思い入れはない。ただ、わたしの頭のなかでは、小学校時代に男女いりまじって遊んだ夕暮れの教室や、中学校時代に友だちと上手くいかなかった帰り道、高校時代にめっきり口数を減らした日々がぱちぱちと、浮かんでは焼け落ちるようにフラッシュバックしていました。映画は、なんだかイマイチ。でも、それが良かった。

エンドロールを終えると、時計の針はてっぺんを少しまわったところでした。明日も仕事だから、寝なければなりません。でも、もう少し起きていたいと思いました。

 

お酒を飲んでいたのもいけませんでした。アルコールは、人の判断力を極端に鈍らせます。ちょうど飲みきった空き缶を捨て、勢いをそのままに冷蔵庫に手をかけたら、夜更かし決定。発泡酒のロング缶が、パシッと気持ちよい音で泡をふきだします。

 

もう一本、借りてきたDVDをデッキにセット。蛍光灯の白い明かりが煩わしくて、カチカチと2回繰り、オレンジの豆電球にします。

きょうを惜しむように夜更かしする夜。

明日は眠い目を擦らなければならないだろうし、朝起きれるかも不安です。でも、そうせずにはいられませんでした。

 

左様なら

左様なら

  • 発売日: 2020/07/22
  • メディア: Prime Video