2人きりのパーティー
大学時代にした妹との2人暮らしは、楽しい思い出です。
規則正しく学校に通う妹と、卒論を残すのみとなって毎日のように居酒屋バイトに入るわたしでは、生活リズムがまるで違いました。朝、光を通さないじゃばらカーテンの向こう、妹が身支度する音で目を覚まし、夜、わたしが家に帰り着くころ、妹は居間のソファでうたた寝をしていました。生活時間は被らないけれど生活空間を共有していたので、しょっちゅう言い争いをしました。やれたたんだ洗濯物を居間に放置するなとか、やれ洗い物をサボるな掃除機をかけろとか。わたしは、トイレで寝るくらいならお酒を飲むなと怒られました。…言い訳をすると、映画のオールナイトに行った朝、なんとも気持ちの良い朝に眠る気がおきず、その足でレンタルショップに行き借りた映画をお酒とともに見ていたら、トイレに立ったそのタイミングで眠気がピークに達したのです。この一件は実家に報告されて、少し面倒なことになりました。
でも、楽しい思い出がいっぱいあります。
帰り道、最寄駅で妹の後ろ姿を見つけて駆け寄る時は特別な気分。
「いま帰り?」
「うん」
「夜ごはんどうする?」
「うーん」
そっけない妹の態度はご愛嬌。かまわず話しつづけます。
「じゃ、パーティーする?」
妹の目が、きろりと光るのを見ました。
帰り道のスーパーで豚肉とレタス、えのき茸とお酒を買って。豚肉はロースとバラ、2種類買って食べ比べることにします。手分けして持つ荷物、妹がリュックだからと、お酒の缶をポイポイ鞄に入れました。学校のこと、バイトのこと、友だちのことを話しながら並んで歩いて、家につけば、しゃぶしゃぶパーティーの始まりです。妹は、しゃぶしゃぶにレタスを入れると美味いことを知っていました。
お父さんもお母さんも友だちもいない、2人だけのパーティー。
ちょっと特別で、楽しい思い出です。