ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

卒業

わたしが大学を卒業したのは5年前。当時わたしは、サークルや学外団体に所属していて、それなりの中心メンバーでありました。学校祭の出店準備をしたり、講義終わりに1人の家に集まって仕事をして、青白い朝の光のもと家へ帰ったり。学校祭の収益で食べたうちあげの焼肉や、仕事をしながら深夜をまわったころに誰かが再生ボタンを押す映画はよく覚えているのに、雑魚寝して感じたはずの身体の痛さは、まったく覚えていません。それほど、「楽しい」だけの毎日でした。

メンバーの幾人かとは、いまも連絡をとっています。卒業の日、「またすぐ会おう」「連絡するよ」と別れを惜しんで交わされた約束は、歳月を経てもなお有効でした。

 

最近、SNSアカウントに、所属していた学外団体の公式アカウントからフォロー申請がありました。見てみると、もちろん、わたしの知っている顔はありません。活動方針も、活動内容も、活動場所だって5年前とかわりません。けれど、「あ、ここで会議したよな」と思う写真で、笑いかける顔は知らない大学生でした。

 

わたしは大学を卒業するとき、仲間たちとは入念な別れを交わしましたが、「楽しい」日々を過ごすために必要だったサークルや学外団体といったあの「場」には、別れのひと言も発しませんでした。最後の活動日も、なんの気なしに「おつかれ」と、自宅へ帰りました。そう考えると、いまになって、胸にぽっかり穴があいたような心地がします。

 

わたしがいなくても、あのサークルは、あの学外団体は、誰かの「楽しい」場になって、かわらず日々を刻んでいます。

映画を見ていて、そんなことを思い、なんだかちょっぴり、寂しくなりました

 


映画『ワンダーウォール 劇場版』予告編