5月のテーマソング
やる気が出ない。
ほおを撫でる風はやわらかく、花と草の青っぽいにおいが鼻をくすぐるというのに。動きづらい冬服から解放されて、ようやくどこへでも行けるというのに。新しい人、新しい場所に胸は小さく踊っているというのに。
気怠く、億劫で、動きがたくて、胸の鼓動を静かに静かに眠らせておきたい気持ちにさせる、そんな不思議な力が、5月にはあります。
社会人も5年目なのに毎年この時期こんなことを思っているのだから、第三者的な力を感じずにはおられません。いくらしっかり寝ても布団が恋しく、目を見張るようなことにも口の端で笑うだけ、人との会話も必要最小限に抑えようとしてしまう今日この頃です。お手上げ。
でも、すべてが面倒なわたしにも「音楽を聴く」という行為は酸素と同じように身体に沁み込んでいて、朝起きて、春の陽をあたって、当たり前に音楽アプリをたちあげました。なにを聞くわけでもなく適当に再生ボタンを押して、音楽を垂れ流します。そうするうちに、ある曲、あるフレーズで、はたと目の覚める瞬間があるのです。
それは、夜の街をドライブしたくなるようなシティポップかもしれませんし、赤裸々な言葉で歌うヒップホップかもしれません。心の内を叫ぶJ-ROCKかもしれませんし、体を動かさずにはいられないダンスミュージックかもしれません。なにが良いのかはわからないし、昨年その曲だったからと言って必ず今年もその曲であることはないけれど、毎年ぜったい、5月のわたしを立て直してくれる1曲があります。
わたしはそれを5月のテーマソングとして、気怠くて億劫で動きがたくて胸の鼓動を静かに静かに眠らせておきたい気持ちになったとき、大切に聴くのでした。
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今週のお題「やる気が出ない」
