ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

祖母と母、母と私

「もう、おかあさんったら」

わたしのセリフではありません。わたしの母、つまり、母と祖母の会話です。

 

1年半ぶりの祖母宅。従兄弟一家が暮らしていましたが、兄弟はすでに家を出ていて、ふだんは祖母と叔母さんだけ。3年前に祖父が他界してから、立派だった庭もゆっくりゆっくり自然に帰ろうとしていました。それを整えるのが、年に数回、実家に帰る母の仕事です。

 

母は、庭いじりが趣味です。春一番に芽吹いた花の写真が送られてくるし、綺麗に実をつけたブルーベリーやナスが段ボールにつめられて届きます。自宅の庭は、母のこだわりがつまった場所。そしてそれは、祖父も同じでした。離れまである田舎の広い家で、池を作り鯉を飼って、前庭はまるで日本庭園のように砂利を敷き詰めていた祖父。亡きいまは管理する人がいなくて、そこかしこでどこからやってきたのかわからない草木が元気に葉を広げていました。

 

そうすると、呼び出されるのが母。景観を損ねない程度に草木を刈りそろえ、祖母がどこかからもらってきた花の苗を植えてやります。そのあいだ、一緒に祖母宅を訪れたわたしや妹は、庭に向かって大きく開かれた窓から、彼女たちの話し声を聞きつつ叔母さんとおしゃべりするのでした。

 

「もう、こうすればいいの、おかあさん」

「あら〜わたしはなんにもわかんなくてね」

まるで、わたしと母の会話です。でも、わたしはここまで語気を強めることもないような…母があまりに強い口調で祖母に言いつけるので、なんだか祖母が可哀想になって庭に出ました。母と祖母の隣に並ぶと、祖母はまったく意に介していない様子。彼女たち親子にとっては、それが日常なのでした。

 

「お姉ちゃん、叔母さんが言ってたよ」

帰りの車のなかで、妹がいいます。あのとき、3人並んだ後ろ姿を叔母さんと2人、家の中から眺めていたという妹。

「3人、親子だねって」

なるほど。祖母と母、母と私は、紛れもなく親子です。