ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

あなたの言うことが嘘でも

「この話をすると、嘘でしょう?って言われるんだけど」

そう前置きして、聞かせていただいたお話。まるでショートドラマな実体験を、ちょっと照れたように話して、おしまいに

「ね、作り話じゃないんだよ」

と念を押されました。わたしは

「もちろんです」

と言って至極真面目に頷いたけれど、まあ、本当のところ、その人のお話が嘘でも本当でも、どちらでも良い気がしていました。

 

わたしは、お話を伺うのが本当に好きで、印象的だった出来事とか、今につながる経験とか、苦かったり甘かったりする思い出を、大人しく、じっくり、楽しく聞きます。聞かせていただく場所はそれぞれ。食事の席だったり、ちょっとした集まりのついでだったり、移動の車中だったり。もちろんお酒が入っている時もあって、だから、伺うお話が必ずしも美しく成文されたものではないこともあります。誇張されていたり、エピソードが欠けていたりして、まあ、物語としては不十分なのでしょう。でもわたしは、それでも良いと思うのです。

 

お話ししてくださった方がどのような形で物語を心に留めていて、何を感じているのか。

それが、現在のその人にどのように影響しているのか。

その人は、どうしていま、このタイミングで、わたしにそのお話をしてくださるのか。

わたしが知りたいのは、そういうことでした。だから、たとえ誇張されていたり、エピソードが欠けていたりしても、それがその人の物語である限り、わたしは楽しく伺います。嘘とか本当とか、そんなに大事なことじゃないでしょう。