ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ゆきむし

2022年、10月2日、午後5時。

今年はじめての雪虫を観測したことを、ここに報告いたします。

 

仕事がひと段落しました。休日に朝から晩まで働いたこともあり、なんだか放心状態で半日。かろうじて昨日の飲み会の残骸を片付けて、冷蔵庫のなかでカビを生やしかけていたカボチャを味噌汁にしたあとは、ずっとベッドの上にいました。そろそろ仕事をしなければと起き上がると、外は日が暮れかけて、庭に長い影ができています。

そうだ、散歩に行こう。

気分転換に、歩いて10分ほどのコンビニまで。1日中家にいたし、よい運動です。薄い部屋着にジャンバーを羽織っただけ。昨年の秋に買った白いアウターは、春先に着てクリーニングに出しておいたのでパリッとしています。ケータイとイヤホン、鍵だけを持って外へ。やはり、1枚羽織ってちょうどよい気温です。でも歩いているうちに暑くなるでしょうか。少し迷ったけれど、着替えにまた家に入るのが面倒で、玄関扉に鍵をかけました。うちの庭からは住宅の屋根の向こうに海が見えて、海と空の境目あたりから赤、オレンジ、黄、白、薄青、青、群青のグラデーションをつくっていました。水をたっぷり含ませた平筆に、少しだけ水彩絵の具を乗せてさあっと引いたような空。きっぱりと幻想的な色合いをした夏の夕焼け空とはちがう、秋の空です。

 

夕方の住宅街は静かで、たまに自転車に乗った子どもに追い抜かされます。日の入り時刻がだんだん早くなって、午後5時の太陽は駆け足。子どもたちの足取りも早く、どこかむこうの方で、醤油とみりんがぐつぐつするにおいがしました。

 

普段は車で通る道のりを、ゆっくりと歩きます。中学校の裏にさしかかったところでふわふわと視界を横切るもの。雪虫です。おしりに白い綿のようなものをつけたアブラムシで、冬の入りしなに発生します。一説には、雪虫が出てから10日で初雪が降るとか。しかしここ3年ほどのわたし調べでは、雪虫発生から20日ほどが初雪の降るタイミングです。

 

コンビニについて扉を押すと、帰宅時刻のサラリーマンや親子でにぎやか。なんだか、みんなまだ夏の名残みたいな半袖や薄い上着を着ています。わたしは今日、雪虫を見ていますから、あと20日。今月末には、冬がやってくるはずです。