ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

さいご

さいごのときって、どんな気持ちなんでしょう。卒業式とか、引越しとか、仕事を辞めるときとか。

 

あしたついに、前職をきっぱり辞めます。退職後、食い扶持としてアルバイトさせてもらっていた前職場でしたが、繁忙期も終わり人手が足りるとのことで、悩んだけれど辞めさせていただくことにしました。これで、この5年と半年通った職場ともお別れです。

 

さいごのときって、どんな気持ちなんでしょう。卒業式で涙する友だちを見ました。今生の別れでもないのに、会おうと思えば会えるのにと思いながら、その日最後になる校舎のにおいを胸いっぱいに吸いこんだのを覚えています。引越しを7回経験しています。友だちと離れるのは寂しいけれど、これからガラリと変わる暮らしを思うと、胸の高鳴りを抑えられませんでした。アルバイト含め、何度か退職も経験しました。どこか清々した気持ちで「お世話になりました」と頭を下げました。

そういえば、わたしは卒業式も引越しも退職も、特別な感慨がなかったように思います。いえ、感慨がなかったのではなく、新しく始まる明日からのことにずいぶんと気を取られ、感傷に浸る余裕がなかったのでした。

 

だって卒業式をしたあと、校舎の前を通るたびに楽しかったあの日々を思い出しました。たまに遊びに寄る校舎や先生方との会話は、年月をあけるほど感慨深いものがありました。

引越してもなお、関わりのある友だちがいます。思い出したときに思い出したように連絡すると、まるで昨日も会っていたようにしっくりと、距離を感じさせない返事がかえってくるのです。

退職は、自分の殻を破るようなものでした。古くなってまとわりつく殻のカケラを払いながら、柔らかく新しい殻が密かにできあがっているのは、どきどきして、そわそわしました。

 

だから、今回も大丈夫だと思います。

あした、前職を辞めます。