ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

一大イベントの飲み会

「これから飲まない?」

そう言って、気軽にお酒を飲みます。でもそれは、ここ2、3年のはなし。以前は、その日の気分で、そのとき都合のつく仲間と、手近な場所でお酒を交わすような飲み方はしませんでした。たとえば大学生のころ、「飲み会」は一大イベントでした。

 

成人して間もない大学時代。文系で女子の比率が高かった学科の友だちは、頻繁に飲み会をしたり、集まって遊ぶといったことをしませんでした。きちんと予定を合わせて、お店をあらかじめ予約して、最寄りの駅でまちあわせをしてから、足並みをそろえて飲み会へ。だから、「飲み会」のある日はいつも、胸が躍りました。

 

朝、いつもどおり学校に行きます。夜は街にでるので、少しだけおしゃれをして。友だちとあいさつを交わし、「きょうのお店ってさ」とおしゃべりします。日が暮れてくると、別の講義をとる友だちがぱらぱら輪を外れます。「夜までどうする」といって、図書館やコンピューター室でつぶす時間が好きでした。

課題作業とは名ばかり、スケジュール帳をひらいてアルバイトの調整をしたり、SNSを流し見します。ときどき窓の外に目をやると、朱色から紅色、紫色から群青にかわる空。いつもなら、1人暮らしの部屋への帰り道、穴が開いてスカスカするような気持ちになる時間ですが、きょうは違います。これからわたしたちは、四方八方から音が飛び交い、赤や黄色や青のネオンが瞬き、誰もがワハハと口を大きく開けてすれ違う夜の街へ繰り出すのです。「飲み会」は一大イベントでした。

 

いまでも、当時の友だちとお酒を飲むときは、あの頃の「飲み会」を思い出します。社会人4年目、住む場所も日々の暮らしもすっかり異なるわたしたちは、きちんと予定を合わせて、お店をあらかじめ予約して、最寄りの駅でまちあわせをしなければ、「飲み会」ができません。だから、やっぱりわたしたちの「飲み会」は一大イベントなのでした。