ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ふるさと

誰かが言っていました。「責任は分散させたほうがいい」と。1つところに集中させると唯一のそれがダメになってしまったときのダメージが大きいので、分散させてリスクヘッジするのです。仕事は1人で抱え込むより複数人で取り組んだ方がいいし、心潤す趣味は多様である方がいい。知り合いは多い方が視野が広がるし、1つの情報に固執するより多角的に見て考えるべき。だから、心の拠り所となる「ふるさと」も多い方が良いでしょう。

 

あっちにもこっちにも仕事がとっ散らかっていて、極め付けは1通のメール。いま言われても困るよ、とこぼさずにはいられないそのメールのおかげで、張り詰めていた緊張の糸が弾け飛びました。もう何も手につきません。隣のデスクの先輩が腫れ物を触るように声をかけてくれるけれど、ごめんなさい、わたしの気持ちは立て直せません。もう、目の前の仕事も、明日の打ち合わせもほっぽり出して実家に帰りたい気分。実家の猫の腹に顔を埋めたい気持ち。

「お昼買ってきます」

こういうときは、1度その場を離れるのが1番です。

 

実家は、道南の一大観光まちです。車で5時間かかるので、たやすく帰ることはできません。せめて昼休みくらい、職場からより遠く広いところへ行きたくて、スーパーの食料品コーナーへ足を運びました。平日の昼下がりに人はまばら。ぐるりと見渡すと、企画コーナーのワゴンのなかに見覚えある商品がありました。

やさしい色のパッケージと、やわらかいタッチのイラスト。別海町の乳製品です。道東の酪農まち別海町は、第2のふるさとと言えるまちでした。商品を手にとった瞬間、楽しく学び多い日々、大切なひとの笑顔が思い出され、脳内を凌駕していた仕事の鬱憤が隅へやられるのを感じました。

ふるさとは偉大。

心をよぎった道南のふるさとと、手の中にある道東のふるさと。

商品を手にレジへ。大人しく、職場へ戻りました。

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