右肩をクンとあげる仕草が可愛かった
友だちの小学生が通うピアノ教室の発表会があるというので、行きました。
公民館の小さな視聴覚室で、グランドピアノだけに照明が集められてピカピカして、名前を呼ばれて一人一人登壇して、お辞儀をして椅子に座る。ギシとなる椅子の音が大仰に感じられたかと思ったら、彼ら彼女らが恭しく腕を持ち上げ音をならす。
ピアノ発表会にお呼ばれするのが初めてだったので、なんだか目に入るものすべてが眩しく感じられました。友だちの女の子が、いつもと変わらない様子で黒くてらてらするピアノの前に立って深くお辞儀をして起き上がったとき、クン、と右肩を持ち上げる仕草が可愛らしくていつもどおりで、なんだか安心しました。
でも、彼女がならすのは、わたしの知っている音ではなくて。
ランゲ作曲、花の歌。
音楽の授業で聞いた覚えがあるけれど、ぜんぜん知らない音でした。
なんだかもうどうしようもなくて、彼女をまっすぐ見ることができませんでした。
わたしが地域に1つしかないTSUTAYAさんのスタッフに「もう何度もきかれているかと思いますが…」と月額借り放題サービスを勧められているとき、彼女らは学校に部活に習い事にと一生懸命で、その成果を胸に堂々と、てらてら光る舞台に立っているのかと思ったら、なんだか喉元がギュッと狭くなるのを感じました。
右肩をクンとあげる仕草が可愛いかった。
帰り道、運転する車のなかでちょっとマネしてみたけれど、やっぱりわたしはわたしで、どうしたって可愛くも、堂々ともしていませんでした。