ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

あおいちゃんへ

手紙を書きました。

幼稚園のころから文通をしている幼馴染がいます。わたしの引越しを機にやりとりを始めて、頻度に差はあれどかれこれ20年近く…数えてみて、期間の長さに改めてびっくり。

交友の幅が広がってSNSが発達した今となっては、1年に1度、年賀状をやりとりするくらいです。

 

今年は喪中だったので、手紙を書きました。

 

机の2番目の引き出しに、いまはもうほとんど使わない便箋コレクションが眠っています。新年だから厳かに、でも20代の女性らしさを感じさせる綺麗な色のものを選びました。

無造作につきささるペン立てから、ブラウンのボールペンをチョイス。黒だと面白くないでしょう。

誤字で2枚の便箋をダメにしました。修正液のペン先がすっかり固まっていて、使い物にならなかったのです。

この間に5回、スマホで漢字を検索。国語は得意だったはずなのに、文字を書くということがすっかりダメでした。

途中、飲んでいたビールをびしゃり。こんなこと中学生のわたしには考えられないハプニングです。書きかけの便箋は泡をふく液体を吸ってひたひたでした。

 

やっとの思いで書きあげた、便箋1枚。

1年に1度言葉をおくる相手に、ましてや大人となった今、伝えたいことはその程度。

ハガキ1枚でも事足りたけれど、あえて便箋に文字を連ね、封筒で包みました。

 

手紙を書きました。

コンマ1秒で意思を伝えられる時代。

でも、わたしは手紙を愛おしく思うのです。

便箋を選ぶ、ペンを選ぶ、文字を書く、誤字に頭を抱える、封筒に包む、宛名を確認する、ポストを探す、投函する、返事を待つ。

そのあいだ、手紙の向こうにいる彼の人を想うことができるから。

文字を入力して、送信して、おしまい。

それ以上に、言葉に込められるものを感じる手紙を、愛おしく思うのです。

 

2020.01.07   あい より