ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

年賀状を描く

中学3年間で美術部に所属していただけのわたしが1年に1度、当時母からもらった水彩色鉛筆をひっぱりだすイベントがあります。

年賀状を描くのです。

 

まず、紙がいい。

まっさらな普通紙のハガキは、程よい厚みと滑り具合で、色鉛筆の走る音がシャリシャリと軽やかです。これが、コピー用紙だと薄すぎてその下の机まで意識してしまうし、画用紙だと鉛筆の先が引っかかる感覚があって絵の具を使えばよかったと思うでしょう。絵を描くケント紙はいやに筆がすべるけれど、絵を極めるとあのツルツル紙面を愛さずにはいられないのかな…。

 

色がまざるときの、重たい感覚がいい。

それまで軽やかだった筆先がクンと引っかかります。それにかまわず少しだけ力をこめると色と色があわさって、筆先がグリグリして、色鉛筆とは蝋でできているんだな、なんてぼんやり思います。

 

濃い色を落としすぎた時の、後悔がいい。

なるべく原色に近い色を紙の上で合わせるのが好きなのですが、輪郭の淡さが気になるところには紫や群青を使います。ゴリゴリと削ってとがらせた筆先を、色鉛筆が生んだ混色と残した白色の際に沿わす。でも、調子に乗ってそのままスルスルと淵どりしてしまうと、途端に合わせた色が映えなくなるのです。やりすぎ厳禁。

 

できあがって写真を撮ると、風合いが変わるのがいい。

最初にライトブルーで線画を描くのですが、この色がどうやら電子機器に受け付けないらしく、線画をそのままに色をのせていくと、写真にして見た時ブルーが浮かばれなくてなんだか黄色飛びした絵になります。でも、この手にしてこの目にしか映らない色合いというのがまた、なんだか、いいでしょう。

 

今年も、年賀状を描きました。

どこか黄色飛びした写真はご愛敬。電子機器の限界、手描きの醍醐味です。

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