ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

わたしの全部

結婚式。

大学からの友だちです。進学を機にひとり暮らしを始めたわたしに、友だちはゼロ。ひとり地下鉄に乗り、大学へ行き、オリエンテーションを受けて、ひとり帰ろうとしたエレベーターホール。彼女が声をかけてくれました。出会いから8年。わたしが札幌を離れた今も交友があって、北海道の左上まで遊びに来ることもあります。彼女の、結婚式でした。

 

大学卒業以来ひさしぶりに会う友人もいました。卒業して4年がたっているというのに、空気感や話すことに変わりがなくて、キラキラしたドレス、しっかりとした化粧だけが、随分と大人の風でした。話に花を咲かせているうちに、厳かな教会の扉が開きました。

天井まで届く背の高い扉、満天の夜景をバックに、純白のドレスに身を包んだ彼女。ベールに隠された顔から首、肩のラインがすっきり白く、裾の広がったドレスは照明にちらちらと反射します。深紅のバージンロードを、一歩、一歩と踏みしめる彼女。手をのばしたら崩れそうなほど美しい佇まいとは裏腹に、一足ずつ確かめながらひょっこりひょっこり進むその姿はやっぱり彼女で、そう思った瞬間、涙が溢れました。

 

出会いから8年。わたしはきっと、彼女の何も知りません。

出身も嗜好も今いる場所も、すべて違う彼女とわたしを、それでも結びつけているものが何なのか、わたしにはわかりません。純白のドレスは美しいけれど、すごく重たくて動きづらそう。それでも背筋をのばし、きらめく数千の夜景をバックに微笑む彼女の、何を知っているというのでしょう。けれどわたしは、彼女のためなら何でもしたいし、彼女が離れていく未来を想像できないのです。

 

「いや、あいちゃんは、わりとわたしの全部を知っているよ」

 

挙式後のパーティー

めいめいがお酒や料理を楽しむテーブルで、彼女のひと言。教会で流しきったと思った涙が、再びせりあがるのを感じました。

まなみ、おめでとう。

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