ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

雨一番

雨一番、軽雨、春霖雨、花の雨、春雨、春時雨、春驟雨、春の雨、菜種梅雨

 

北海道の左上に、

今年はじめての雨が降りました。

少雪の今期、すっかりアスファルトが顔を出した車道の脇に積まさった雪は、連日の気温と陽射しで溶けかけてザラザラしていました。そこへ夜のなかではわからないような細い細い雨が急くようにやってきて、カラリとしたアスファルトはあっという間に真っ黒。残った雪もよっぽど腰が重そうです。

 

3月10日午後、半年ぶりの光景に「雨ですか?」と外から帰ってきた同僚と目を丸くしました。

 

例年なら4月のアタマにやっとくる春の雨。二十四節気や季語はたいてい北海道の季節を待ってくれなくて、春分とか春雨とか、とうてい1ヶ月は先かなという時に暦の上に訪れるけれど、今年は季語に間に合ってしまいました。

そういえば北海道の季節は、この時期なんとも曖昧で騙し討ちのようにして訪れます。長く厳しい冬が明けるのを今か今かと待ちわびて、首がすっかり伸びきったころに梅と桜がいっぺんに咲くのです。毎年梅を見たいと思っているのに桜が追っかけやってくるから、梅の芽吹きをじっくりしっかり味わったのは、23歳大学の卒業旅行で訪れた沖縄が初めてです。

 

週末の陽射しが穏やかで「春ですね」なんて会話もでていたこの頃。冬なら絶対足の向かない日本海は、穏やかな波音で人を誘っていました。昨日も今日も時折やんだりしながら静かに静かに雨が降って、名残のような雪を重たく地面に沈ませます。

 

ひと雨ごとに木の芽花の芽がふくらみ、生き物が活発に動きだす春雨。

今年も、

北海道の左上に春がやってきました。

 

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