ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

うんどう

引っ越しに際して、諸々の手続きをしに出かけました。いつもは車でびゅんと行ってしまうところだけれど、不幸なことにこのタイミングで壊れ、手放してしまったので渋々歩いて出かけます。3月といえど北海道の左上。陽がさしていても、雲が出たり風が吹いたらグッと寒くなります。冬用より少し薄いコートを羽織って、一瞬迷って、マフラーをぐるぐる巻き付けました。

 

歩いて5分の銀行、プラス5分の郵便局、さらに5分の市役所。

ところどころに雪が残るアスファルトをカツカツ、ザクザクと踏み鳴らし、背筋を伸ばして大股で歩きます。そのほうがカロリーを消費するような気がします。冬の間は息を潜めるように暮らしていた住民もずいぶん出歩くようになって、まだわたしの背丈より高くそびえる雪壁を崩す人、ランドセルを背負った下校時間の小学生の姿がありました。

 

手続きそのものは、指定された書類に指示されたことを記入して、判子を押してちょっと待てば、完了。思ったよりもスムーズに事がすんで、市役所から10分、このまま、ただ歩いて帰るにはちょっと惜しい気がしました。せっかく、きちんと昼前に起きてシャワーを浴びてお化粧をして、マフラーをぐるぐる巻きにして家を出たのだから、もう少しこの冬の名残のような、春の始まりのような、暖かいんだか寒いんだかわからない、湿っぽくてうずうずするにおいを嗅いでいたい気持ちになりました。

歩いて30分の警察署。

免許証の住所変更をせねばなりません。後日、近くに用事のあるときにでも寄ればいいと思っていたけれど、まあ、せっかくなので行ってしまいましょう。

雲は相変わらずどんよりと重たくて、気付けば雪が落ちてきました。水分をふくんで重たい雪がゆっくりゆっくり降りてきて、睫毛の先につきました。遠くでカラスが鳴いて、子どもたちのはしゃぐ声がします。春なのかもしれません。冬なのかもしれません。ずいぶん歩いてあたたまった腿の裏の筋肉が、じんわり痒くなりました。