ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

蒼白

道が滑りそう。

免許更新に行く予定でした。けして都会ではない北海道の左上、週末に免許更新対応をしている運転免許試験場は、車で2時間弱かかります。ついでにあちこち、用足しをしようと考えました。しかし、前日に雨が降り、加えて終日氷点下10度前後という天気予報。ツルツル注意。免許を更新しに行って、スリップ事故なんて面白くありません。更新期限までまだ日があるので、持ち越すことにしました。

 

さて、急に予定がなくなった休み。

よく晴れているようだけれど、二重サッシのすりガラス越しには、外の様子がうかがえません。こういうとき、人は気持ちがいいと言って散歩やドライブにでかけるのでしょうが、その日わたしは、ただぼんやりと居間のまんなかに座って、太陽の光を浴びていました。

陽光は1人暮らしの部屋に2つある窓の両方からめいっぱい差し込んで、じんわり室温を上げます。あざやかな、黄色。気まぐれに背筋を伸ばして肩甲骨を寄せてみると心地よく、寝転がって足を動かしたり、腹筋したり。じんわりと汗をかいてきたところで、風呂に湯を入れました。

我が家で湯船につかるのは半年ぶり。1人暮らしで追い炊き機能もない風呂は、もっぱらシャワー室でした。熱めの湯を風呂釜の半分くらいまで入れて、ぬるくなるまでじっくりつかります。上がるころには、部屋がオレンジ色でした。

カシッ

お酒のタブをひきます。録画した深夜のバラエティー番組を陽のあるうちから見ていると、なんだか贅沢な気持ちです。だらだらと缶を傾けているうちに、陽はじっくりと傾いて、群青色に沈んでいきました。

 

週明け。

月曜日の朝、窓の外で忙しく行き交う車の音で目が覚めました。玄関ドアを開けたとたん、容赦なく吹きつける風に涙が滲みます。すりガラス越しだった窓の外は、黄色でもオレンジ色でも群青色でもなくて、ツルツル路面にうっすら積もった雪がすこし、蒼白く見えました。