プリンセスとわたし
「え!あいちゃん、ディズニープリンセス見たことないの!?」
そう、わたしはディズニープリンセスを見ずに育った女…。
初めて見たアニメがドラえもん&クレヨンしんちゃん、漢字は高橋留美子作品で覚えた純日本製なので、ディズニープリンセス作品の歌い踊るミュージカル、くるくると変わる表情、どんな展開にも幸せを信じ希望を抱く登場人物たちに馴染めませんでした。王子様といつまでも幸せに暮らしましためでたしめでたしエンドとか。
大学に進学して、不意に構築された女子グループで出会った彼女は、ディズニーランドで買ったストラップを鞄につけ、ディズニープリンセスのスマホケースを愛用していました。出会って2時間でタイプが違うとわかったけれど妙なこともあるもので、グループは再編成されることなく現在も、北海道の左上に暮らすわたしが札幌を訪れる際には連絡をとりあう仲なのでした。
金曜日の夜、おなじみの映画番組は「美女と野獣」を放送していました。
ふと、彼女のセリフ。
「え!あいちゃん、ディズニープリンセス見たことないの!?」
「ないなあ。だって、結局みんなハッピーエンドでしょ?」
「そうだけど、そういう問題じゃないよ!」
「じゃあ、1番のオススメを教えて」
それが「美女と野獣」でした。1番オススメされてなお未見。少し悪い気がして、この機会にとテレビの前に座りました。始まって10分しないうちに歌い踊りだして、缶ビールを傾けます。プリンセスを前にして缶ビールもどうかと思い、せめてワインをグラスで…と立ち上がったとき、スマホがなりました。彼女を含めた、大学時代の女子グループでした。
「オススメしてくれたの思い出して、いま見てたんだよ」
「えー!じゃあわたし録画してるから、今度うちで見よ!」
そのまま、オンライン飲み会。
そう、わたしはディズニープリンセスを見ずに育った女。