週末に瓶を
緊急事態宣言。
好きなバンドのライブも中止となり、アルバムの発売延期が決まりました。かわりに、毎週金曜日ライブ配信のおしらせ。わたしは今日も生かされています。
仕事を切り上げて家路へ。明日も仕事だからあまり飲めないぶん量より質ということで、ビンの輸入ビールを冷やしていました。着替えて、化粧を落として、布マスクを洗って、明日の目覚まし時計をセットしたら、自宅ライブの始まり。
部屋の電灯ではなく、ほの赤い間接照明を。画面は、スイングしてもターンしても片手で支えられるスマホで十分。
栓を抜きました。
わたしが自宅で、すっぴん部屋着でお酒片手に画面を覗きこんでいるように、彼らもまた自宅の特設スタジオでゆるりと話します。思い出したように曲を演奏して、その声がライブハウスで聞くよりやわらかくて、なんだか落ち着きました。よりステージ近くへと常にポジションを探ってもみくちゃにしてされて音を浴びたライブは最高だけれど、いまは自宅。わたし以外に人はいなくて、両手を広げようが大股で揺れようがぶつかることも迷惑をかけることもありません。琥珀色のビンの中で、ビールがぱちゃぱちゃと波立ち、炭酸がしゅうしゅうと弾けます。胴から口までにかけてがすぼまっているので、大げさに動いてもこぼれださないことに気づきました。
ライブは、憧れのアーティストと同じ場所、時間、空気を共有できるけれど、ネット配信は時間だけ。だからやっぱり、ライブがいい。でもいまは、彼らと場所時間空気を共有する日を楽しみに、瓶ビールを片手に部屋いっぱいで揺れるのです。
