ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

甘やかされて

ひさしぶりに、外でお酒を飲みました。

外出自粛要請に従って3ヶ月あまり。家で好きなものを好きにつくって好きなことをしながら飲むお酒も、悪くないと思っています。たまにリモート飲みのお誘いもあって、画面越しに各々の場所から時間を共有できて便利。わたしは都市部で大学生活をおくったのち北海道の左上に越してきたので、都市部の友だちと顔を合わせることが増えました。

 

全国的に緊急事態宣言が解除されたことをうけ、3ヶ月ぶりに居酒屋へ。ウイルス禍に陥る前、多い時には2日連続でお世話になっていた居酒屋さん。あのカウンターでお酒を飲みたいという気持ちはもちろんですが、何より、あんなに良くしてもらったのにこの状況下で何ひとつ恩返しできていないことが、胸をじりじりと締め付けていました。

 

暖簾をくぐり、いつものカウンターへ。マスターの顔が、ひと際やわらかく感じられます。霜のついたジョッキをあおると、「そんな一気に」と笑われてしまいました。

杯の数ほど楽しくなって、友だちを呼びだしたり隣席のおじさんの話に耳を傾けたり、そのうち、日付が変わりました。名残惜しく腰を上げてお会計。いつも甘やかしてくれるマスターに、今日こそ言い値の2倍は置いていくんだと財布を取りだしたけれど、やっぱり甘やかされてしまいました。

 

外に出ると、心地よい夜風。

後から来た友だちはすごい雨だと肩についた滴をはらっていたけれど、出る頃にはすっかりやんでいました。前を歩く背中を、数歩遅れて追いかけます。

 

家で好きに飲むお酒は悪くない。リモート飲みは便利で楽しい。

でもわたしは、カウンターで初めましても年齢もごちゃまぜになってお酒を交わし、風を感じながら帰る、この夜が好きだと思いながら空を見上げて、おぼろげな足取りを指摘されたのでした。