ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

令和二年

令和二年

歌われる歌に、緊張しました。

 

好きなアーティストが2年前に開催したライブの動画を、配信サイトにアップロードしています。休日の夜、キッチンシンクにパソコンをセット。そこが、一人暮らしの部屋で最も広く動ける場所なのです。天井からぶらさがる蛍光電球より、間接照明を。ほの赤い明かりが部屋の隅からじわりと広がります。

ライブ配信のお供に瓶ビールを用意することが、この4カ月でお決まりとなりました。口がすぼまっているので、上下左右に揺らしてもこぼれません。近所迷惑にならないぎりぎりまで音量を上げて、再生ボタン。

部屋のまんなかで瓶ビール片手に、ほの赤いスポットライトのもとで、好きなアーティストの歌声とともに身体を揺らす。何千人とともに音を浴びるライブ会場には到底及ばないけれど、お気に入りの鑑賞スタイルです。

 

ぎう、と胸の奥がすぼまるのを感じました。

中学生の頃から聞いていたバンドは、いまや武道館ライブを成功させます。素顔を明かさないスタイルを貫きながら、プロジェクションマッピングと携帯アプリを駆使して生ライブを提供する姿が、ひどく眩しく感じられました。鍔広の帽子を目深にかぶり、照明によって身体を深く影に沈ませる様は出会った頃と変わらないのに、よほど赫々たる存在に感じられました。

 

令和二年

 

彼が、配信限定の新曲を歌います。

腹の底からイデオロギーを問うスタイルの彼において珍しく、センテンスごとに跳ね上がる軽やかメロディ。地球規模で日常がひっくりかえったであろう令和二年を歌い上げる彼の令和二年を思わせ、そしてわたし自身の令和二年を考えました。

気づけば今年も、半分を終えようとしています。

わたしは、令和二年、なにをしてきただろう。

 

季節は次々死んでいく

季節は次々死んでいく

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