サギのいる神社の町
観光地でもなんでもない町へ行きます。
よく人からは「どうしてそんなところへ行くの?なにがあるの?」と言われます。
それを探しに行くのです。
休日。天気が良かったのでドライブをしました。目的地は、いつも実家へ通う道のりにある町。特別なにがあるというわけではないけれど、夜、脇道に広がる繁華街のネオンがひときわ眩しく、いつかこの町を歩こうと思っていました。
案外、車通りが多いんだ。
若いひともちらほらいるんだな。
おしゃれなカフェがある。
いつも前を通るここ、ハンバーガー屋さんなんだ。
町の中心部をざっと見て、さて帰ろうかというときに、ふと、いつも信号待ちをする交差点を思い出しました。そのすぐ脇に、立派な鳥居があったのです。
信号がかわるのを待ちながら脇目をやると、白い大きな鳥居。覗きこむとさらに奥にもうひとつ、暗がりにもわかるくらい立派な鳥居が、ぼんやり白く浮かびあがっていました。
せっかく来たから、手を合わせていこう。
いつも眺めていた鳥居をくぐって、境内へ。人の気配はなく、パンパンと柏手の音がやけに響きます。じっと目を伏せ、一礼し踵を返したとき。
ギャッギャッ
濁って響く声、白い身体、大きな羽、長く細い足。
サギです。
田んぼなんかで見かける鳥ですが、これほど近くを飛んで、鳴き声を聞くのは初めてでした。真上を飛ぶサギはしっかりと質量をもって、風を割くようにはっきりとした声でした。
観光地でもなんでもない町へ行って、気の向くままに歩いてみる。そこでの思いがけない出会いは、わたしがそこへ行こうと考え、そうしようと思ったからこそ得られたものです。そして紛れもなく、その町の魅力であります。誰も知らない、わたしが見つけた町の魅力。その特別感といったら。
だからわたしは、観光地でもなんでもない町に行くのです。