秋がちゃんと
「さむっ」
会社をでて一言。すっかり日が暮れて空は群青。雲の合間から星がちろちろしています。糸くずの様に細い月が、ふいて飛ばせそうでした。七分袖のシャツから出た肌をさすって、気休めの暖。秋です。
北海道の夏は、お盆とともに終わります。
本州で真夏日が叫ばれても、北海道では誰が何と言おうと、お盆が終われば海は閉まるし、花火は上がらないし、秋の虫が鳴きます。それは、いつなにが起ころうとかわりません。
今年はおかしな天気でした。
5月に気温が30度まであがったり、台風がひとつもやってこなかったり、27度の快適な夏が続いていると思ったら急な真夏日が猛威を振るったり。お盆が明けても気温が落ちなかったので、もしかして、夏はこのまま続くのではと思いました。ウイルス禍で夏を満喫できなかったわたしたちに、夏が立ちどまっているのです。
お祭りがない、海へいけない、フェスがない、友だちと集まってバーベキューもできないわたしたちに、夏は来ていたのでしょうか。気温だけが勝手にぶちあがって、おかしいのは季節のほう。夏は、みんなのものでしょう。
お盆が終わっても30度まで気温があがった日、カラカラに渇いた喉へ、ビールを流し込みました。窓を開けて扇風機をまわして、ショートパンツにキャミソール、赤から群青に変わる街を見ながら、缶を空にしました。このまま終わらない夏をおもいました。
それから2日。
昨夜はずいぶん涼しくて、開け放した窓を閉めてキャミソールの上にTシャツを着て、けり落とした布団を引っ張りあげました。朝方の気温が、ひさしぶりに15度をきりました。
夏が終わって、秋がちゃんとやってきました。