ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

きょうのわたし

腕時計の電池を交換しました。

大学時代につかっていたものが、机の奥から出てきました。むかし、まちあわせまでの時間つぶしに入った雑貨屋でひとめぼれした、安い時計。黒のバンドとピンクゴールドの文字盤が美しくて、シックなデザインは時も場所も服装も選びません。電池が切れたのを機に新しいものにかえたけれど捨てるのが惜しくて、ずっと机の中で、動かない文字盤をそのままにしていたのでした。

 

つい最近、時計を買いました。自分へのご褒美。デザインも価格もよくて、文字盤がきらりと光を反射するたびに嬉しくて、腕から外してもなお飾っています。それまで使っていたものも隣に並べて、服装や気分に合わせて選びます。

朝。

服を選んで、化粧をして、髪を整えて、ピアスを選んで、おしまいに時計をとる。そう考えると、毎朝、何通りもの選択肢のもとスタイルを決定していることになります。

スカートはワインレッドだから、シャドウはワイン系。いえ、ラベンダーを下地に差し色としてオレンジでも可愛いかも。タイトスカートなので髪はアップスタイルできちんと…襟ぐりがあいたシャツだし、下ろしてもいいよね。髪を下ろすなら耳は見えづらいから、シンプルなピアス…でも、かきあげた時にちらりとゴールドが見えたら可愛い。

さあ、時計。

となったときに、2択というのがつまらなく感じました。服は、化粧は、髪は、ピアスは、と止め処なく考えてつくりあげた「きょうのスタイル」。おしまいに選ぶ時計まで頭を悩ませて、その過程を楽しみたいのです。

 

机のなかで眠っていた時計を、久しぶりにとりだしました。黒のバンドとピンクゴールドの文字盤が美しくて、シックなデザインは時も場所も服装も選びません。家を出るその瞬間まで「きょうのスタイル」に頭を悩ませて、「きょうのわたし」をつくるのです。