ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

オレンジ

ここ数日、北海道の左上はお天気が悪くて、雨がふったりやんだりしています。雲が出ているので、いっそう早く陽が暮れます。

今日もそう。

「雨が降る予報じゃなかったんですけどね」

同僚は言うけれど、路面はしっとり濡れて黒くなったまま、渇くことはありませんでした。おまけにきょうは人の出入りが激しくて、ばたばたとしているうちに夕方。お客さまにお茶を出して、ふうと窓の外に目をやると、オレンジ。街が、オレンジ色でした。のぞく雲も濃い灰色でありながら、陽の光を受けたきわが鮮やかです。

 

会社の入っている建物には、屋上があります。夕陽は、7階建ての道営住宅の向こうに沈んでいました。夏は港に沈んだ夕陽も、季節が進むごとに移動して、今ではすっかり建物の影。そこから漏れた明かりが、街をすっかり染めています。夕陽が放つ明かりは眩しくて、1日のおわりの気配を漂わせる街も、雨を含んでずっしり重たくなった雲も、その切れ間からのぞく空さえ、オレンジでした。

 

夕陽の写真は、加工すればするほど、実際の美しさから離れていきます。食べ物だって風景だって人だって、パシャリと撮った写真より色味や明るさを調整した加工写真の方がしっくりくるし印象的なのに、夕陽だけは、手を加えた瞬間からどんどん色あせて、現実に得た感動から遠いものになります。

 

写真を撮って、動画を撮って、また写真を撮って。そろそろ身体が冷えてきました。

屋内へ入ろうとふりかえったとき、虹がでていました。

虹もまた夕陽に染まって、七色が薄くなっています。

オレンジ。

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