ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

重たい布団

寝具に対するこだわりは、多かれ少なかれ、各々にあるでしょう。枕の硬さ、高さ、カバーの質感、シーツの肌触り、布団の厚さ、枚数、毛布の有無。なかでもわたしが最も気になるのは、布団の重さ。

 

まだ小学校にあがったばかりの小さいころ

母方の祖父母の家で寝泊まりすることがありました。正月なんかはお邪魔して、家族で新年を迎えるのです。そうするとわたしたちは、一階の、仏壇のある和室に布団をひいてもらいました。

その部屋には暖房がなくて、ふだん引き戸を締め切っていることもあり、夜眠るときは大層室温が下がっていました。震えながら布団にもぐって、そうすると足元には湯たんぽが入れてあって、それでも顔が寒いので、鼻の先までぐっと布団を引き上げました。

それは、重たい布団でした。

子どもが横になって、腕の力だけで引き上げるには難儀する重量感。もちろん身体にも圧迫感があるけれど、寒い部屋ではその圧迫も温みを守るベールのようで、安心したのを覚えています。

 

祖父母の家は寒かったので、重たい布団が重宝されました。でも実家はどの部屋にも暖房があって、運ぶのも仕舞うのも不自由な重たい布団は好かれません。自室でも軽く温かな羽毛布団で眠っていたけれど、わたしは、幼いころの冬の思い出が、心に温みを残していたのでした。

 

一人暮らしをする今、祖父母の家にあったような重たい布団が、わたしの部屋の押入れに眠っています。

今年も、この重たい布団とともに、長く厳しい冬を乗り越えるのです。