ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ぬくぬくとした場所で生きてきた

この4月からひとり暮らしをはじめたという新社会人、新大学生の諸君、ひとり暮らし歴10年のわたしから言わせてもらおう。寒さには屈しなさい。電気ガス灯油代を気にして、意地をはって着込みに着込んで生活したところで、自然の方が何億倍も強い。寒いなか暮らしていると、動きが鈍り思考が減衰し気持ちが落ち込む。寒いと思ったらさっさとストーブをつけて、1枚多く羽織り、温かいものを食べて、厚手の布団にもぐり眠る。これに限る。

 

とはいえ、わたしの10年に及ぶひとり暮らしも、この春ついに終止符を打ちました。友だちと、一軒家シェアハウスをはじめたのです。大きな戸建て一軒家は多くの部屋があり、わたしの個人室も8畳はあるでしょうか。快適。かと思いきや、問題がひとつ。家全体が、著しく寒いのです。

 

おそらく、断熱材の問題。古い一軒家は、いくら室内を暖めようと、暖気をすぐに外へ逃してしまいます。一軒家ですから、ひとり暮らしのアパートのように、ストーブ1つ置いたところで解決する問題ではありません。自室にストーブを置けば、台所が寒い、風呂場が寒い、洗面所が寒い。末端冷え症で寒がりのわたしは、行く末を案じました。

 

でも、1週間も暮らすとどうでしょう。

自然に勝てない人間ですが、逞しいスキル「慣れ」を備えています。湯気の上がる湯で顔を洗い、筋トレをして身体を温め、冷え切った風呂のタイルを踏みしめる生活を1週間も続けていると、思ったよりも快適に暮らしている自分に気がつきました。そして、実家やこれまで暮らしてきたひとり暮らしの部屋を思い出し、随分とぬくぬくした場所で生きてきたと思ったものです。わたしはまたひとつ、逞しくなりました。

 

この逞しさが、単に、春の訪れからの気温上昇による勘違いでないことを祈りつつ、実家を離れて11年目の暮らしを迎えます。