ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

降雪地帯

「おお」

1人の車内に、わたしの声。唸るエンジンとキュルキュルいうタイヤ音に消えていきます。空は真っ暗で、街灯と対向車のランプに照らされて、降る雪がちらちら見えました。正月休み最終日、道南の実家から、道北、北海道の左上へ帰る道のりのことです。

 

道南は、本当に北海道かと疑うほど、少ない降雪で冬を終えます。雪が降っても、日中の太陽と自動車の熱に溶かされて路面が見える道路。スムーズに車を走らせて海沿いの国道を行き、内陸に入って青やオレンジのランプがきらきらする空港を越えたころ、ようやく道路が白くなります。あっと思ったときには、白の壁。いつのまにか道はぐうと狭く、所によって対向車がすれ違うのもぎりぎり。道南で5日も過ごすと忘れてしまうけれど、やっぱりここは、降雪地帯・北海道です。

 

雪のわだちに取られるタイヤ、軽自動車ゆえダイレクトに伝わる振動、車高が低いため雪壁の合間から向こうを覗くのもひと苦労です。信号のある交差点だからって、油断はできません。青信号に遅れた対向車がないか、歩行者はいないか、恐る恐るハンドルをきると

「おお」

大型トラック。

わたしの軽自動車なんて、その右後輪ほどでしょう。左折した5メートル先で、トラックがハザードランプを点滅させて路肩に寄っていました。路肩、といっても、雪壁が高く厚く道路が狭まっているので、どこまでが路肩で、どこまでが左車線で、どこまでが右車線かなんて、わかりません。恐る恐るトラックを右から追い抜くと、また、わたしの口から声が漏れました。

 

トラックが、1台、2台、3台、4台、5台、6台…街灯に浮かぶ黄色、青、緑の車体。グルルと唸るエンジン、キュルキュル鳴るタイヤ、オレンジのハザードランプをちかちかさせた列が、路肩の雪壁を崩して、雪捨て場へ運んでいきます。冬の夜、やっぱりここは、降雪地帯。