宇宙飛行士になりたい
今年、小学1年生になる子どもたちにインタビューをしています。毎年恒例の仕事で、わたしはこっそり「大きくなったら何になりたいですか?」の回答を楽しみにしています。
人気なのは、警察官、消防士、ケーキ屋さん、アイドル…地域性を感じるのは、漁師や自衛隊。けれどたまに、「サンタさん」とか「忍者」とか「ヒーロー戦隊○○」が現れて、決して顔には出さないけれど、微笑ましく感じます。
きょうも、子どもたちの将来の夢を楽しみに、取材に向かいました。
お調子者の男の子。
身体をくねらせて、質問に語尾やら文節やらをのばして、わざと声高に話して。少し苦戦したインタビューの、最後の質問。大きくなったら何になりたいですか?
それまで、機嫌よく答えていた彼が、口をつぐみました。先生に身体をあずけて、指先をもんでいます。先生が、どうしたのかと尋ねると、
「恥ずかしい」
にこにこ笑っていた顔を隠して、ひっそり言いました。
いいよ、なんでも大丈夫だよ、言ってごらん。
先生と2人で声をかけて、ようやく口を開いたのは
「宇宙飛行士」
なんだかびっくりしてしまいました。
わたしたちはいつから、抱く夢を人に話すことを、ためらうようになったのでしょう。
サッカー選手とかアイドルとか、おそらくあと10年もすれば、大きくなったらなりたいと語った子どもたちの半数以上が進路変更しているでしょう。
「きちんと考えなさい」
「努力ではどうしようもないことがある」
「お前には無理だ」
そう言われることで、自分の夢は実現不可能なのだと、人に話すのも憚られるのだと、口をつぐみます。けれど、個人の夢を、誰がどんな権利で批判して良いものでしょう。
お調子者の彼には、10年後も「宇宙飛行士になりたい」と、胸を張ってほしいと思いました。