ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

あんまり美味しくない

そうだ、お昼はあれにしよう。

全国チェーンのファーストフード。大学時代、学校の近くに店舗があったので頻繁に食べていましたが、北海道の左上にはお店がありません。移動の道中にあるそのお店を、ランチに決めました。

平日、13時少しまえ。店内には、高齢のお母さんと娘さんと思われる組がいくつかと、奥の小上がりには、就活中の大学生でしょうか、スーツを着て髪をまとめた若い女性のグループがありました。セルフサービスの給水機のまえで水を注いでいると、そのうちの1人と視線がぶつかり、とっさに、コップに目をやります。水をトレーにのせて、昼休憩中らしきサラリーマンが座る隣のボックスに座りました。

 

カチャカチャいう調理機器と、ずうずう麺を啜る音。窓の外をひっきりなしに走る車。厨房から、バイトリーダーらしい女性の高い声が聞こえます。サラリーマンの座る席とは反対のボックス席からは、お母さん方のご近所話。そして、さまざまな音の向こうに、女子大生が笑う声がありました。

 

あんまり美味しくないな。

麺を啜りながら思いました。天ぷらはサクサクしているし、麺はモチモチ、あたたかです。でも、あんまり美味しくない。大学時代、友だちと食べたものは、もっと美味しく感じられました。

 

消灯ギリギリまでたむろしたサークル棟。外へ出るとすっかり暗くて、ちょっぴり寒くて、あたたかいものを食べて帰ろうということになりました。一駅ほど歩いたところにあったチェーン店。もう寒い、寒いねと言いながら歩いて、小上がりの席に座り込んで、300円しないそれをあっという間に平らげて、お水だけでラストオーダーまで話をしました。それまでさんざん一緒にいたのだから、何を話すことがあったのでしょう。誰もが、帰りたくない顔をしていました。この時間が永遠に続くなら、それも悪くないという顔でした。

 

あの味が忘れられません。