ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

午前7時

朝の空気はひんやりと冷たくて、息が白く煙りました。でもそれほど寒いと感じないのは、まっさおな快晴と、そわりともしない風のおかげでしょう。午前7時。あちこちからどこかに向かって、車が走ります。6時台に出てくるつもりだったのに、寝過ごしました。

 

友だちの家で夜を明かした朝。仕事があるので家路を急ぎます。車通りはあるけれど人通りはなくて、視線が気になりなるべく細い道を選びました。

彼氏がいた時、会社の人に言われたのです。

「あいちゃん、朝早くあそこの交差点にいたよね?」

泊まった彼氏を家へ送る帰り道でした。合点がいったというその人の顔が、今でも忘れられません。

だから、友だちの家から帰る月曜日の朝、人目を避けて歩きます。下手な誤解をされたらたまったもんじゃありません。国道や大きな会社につながる通りはさけて、裏通りやすっかり静かになっている繁華街へ。明るいときに見る繁華街はどこか寂しげで、崩れた壁や落ちかけた看板、つぶれた店の前をぬけていきます。

朝7時を過ぎると車通りがグッと増えることに気づいたのは、彼氏がいたとき。6時30分ごろが、狙い目。

 

午前7時、月曜の朝。

まっさおな空、シャキッと冷たい空気、足早に目的地へ向かう人々。

わたしは、ボサボサの髪に、化粧のおちた顔、道端に芽吹く春の花なんかを数えながら歩きます。

フキノトウフクジュソウムスカリ、クロッカス。

スイセン、チューリップの葉。

やましいことなんかないのに、悪いことをしている気分です。前後左右、人がいないことを確認して、ぐるんと一回転。前後左右空は青くて、空気はシャキッと冷たくて、春の花が咲いていました。

午前7時、月曜の朝。