ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

朝7時

「あいちゃん!朝だよ!7時だよ!」

友だちの家で飲んで、迎えた朝。6時に起きると宣言してアラームセットしたくせに、彼女の声に目を覚ますと1時間の寝坊でした。彼女の家のソファは、ずいぶん寝心地が良かったようです。それとも、「いい加減に寝よう」と毛布をかぶったとき、すでに窓の外がうっすら白んでいたのが良くなかったでしょうか。とにかく、今日も仕事。テーブルの上を簡単に片付けて、荷物を小脇に抱えて、挨拶もそこそこに家を出ました。

 

すっかり明るい空、ちっちと軽快に鳴く鳥の声、このごろの朝には珍しく、暖かくやわらかい風。ふうと息を吸って吐いて、車に乗り込みます。彼女の家は狭い路地をさらに行ったところにあって、迷路のような曲がり角を抜けて大きな道に出ます。二車線道路で、ビュンビュンと追い越していく車、車、車。信号につかまって何の気無しに隣へ目をやると、サラリーマン然とした男性が肘をついて信号を睨んでいました。しっかりと固められた髪、ネクタイが結ばれたスーツ、パリッとしたコート。それなのにわたしは、寝不足と飲酒で浮腫んでいるであろう顔、寝癖をそのままにした頭、雑魚寝ですっかりシワのついた服。何だか、笑えてきました。

 

平日午前7時の景色は久しぶりでした。いつもベッドの中で聞いていた国道を走る騒がしいエンジン音や高くのぼった太陽、高らかに鳴く鳥の声の中で、よれよれの自分はあまりに場違いでした。まだ夢の中にいる気すらしました。家についてシワの寄った服を脱ぎ鏡に向かうと、飲酒と夜更かしで荒れた肌。やっぱりぜんぶ、夢なんかじゃありませんでした。

朝7時。さあ、1日が始まります。

 

朝7時

朝7時

  • 佐野千明
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