ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

わたしの街

都会には、人がひしめいています。たくさんの暮らしが交差しています。

友だちに会いに、都会へ行きました。駅前の居酒屋に入って、レモンサワーで乾杯。隣の席では女性とそれよりひと回りは下であろう男性が座っていました。お酒が進むごとに女性の口調はゆったりと甘くなり、その後ろの席では1人で訪れた男性が、到底1人分とは思えない肉やら野菜やらをばくばくと平らげました。わたしたちはその間で、レモンサワーをかぱかぱ飲みました。

 

レモンサワーに飽きて、店を出て地下鉄へ。あんなに煌びやかだった都会の街並みも、地下に降りてしまうと無機質で空虚です。遅すぎず早すぎないこの時間に帰る人の姿はまばらで、等間隔に並ぶ柱の間を歩くのはわたしたちしかありません。このまま真っ直ぐ歩いていったら、どこへ行き着くのでしょう。まあ地下鉄の改札でしょうが、なんだか、まだ見たことのない札幌の深部に突入する気がしました。

 

友だちの家は主要な道路から少し入った4階建てのマンションの3階で、窓には隣の建物の外壁がうつっていました。道路を走る車の音を聞きながら眠りました。

翌朝、出勤の準備をする友だちの隣で身支度を整え、一緒に出かけました。平日朝8時の地下鉄はしっかり混んでいて、わたしの旅行鞄が邪魔になり抱きかかえるようにして身体をねじ込みました。みんな下を向くか上を向くかしています。スマホを見たり何も見ずに目をつぶったりしています。昨日帰りに乗った、席にだらりと身を預ける夜の地下鉄とは大違いです。地下鉄を降りて、人の流れにしたがって行き着いた改札前でお別れしました。わたしたちを人の波はすいすいと避けて流れます。みんなこれから行くべきところに行って、やるべきことをやるのでしょう。スーツを着たおじさんも、ブレザーを着た女の子も、ストレートの髪をなびかせたお姉さんも、整髪料のにおいをさせた青年も、足早に歩いてすぐに視界から消えました。

 

昨夜はみんなあんなにゆるりとしていた街が、せかせか、どきどき、ぴりぴりしている感じがして、なんだか落ち着きません。都会には、人がひしめいています。たくさんの暮らしが交差しています。

はやくわたしの街に帰らねばと思いました。