ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

自分宛のハガキ

大学時代から集めているものがあります。

旅先から送る、自分宛のハガキ。

寂れた土産物屋の片隅にあるハガキから、なるべくその地域らしい風景写真を選んで、旅の思い出を綴り自分の住所と名前を書いて、投函。すると旅をした日付、地域の消印が押されて、暮らしている北海道の左上の自宅に届くのです。いつも旅の最終日に書いて投函するので、家に届くのはわたしが帰って2、3日後。それまでは旅の延長線上のような、どこかふわふわとした旅の余韻に浸って、家のポストにはらりと1枚のハガキが届いたとき、ようやくわたしの旅は終わるのでした。

 

届いたハガキは、寝室のコルクボードに貼ります。100円ショップで買ってきたコルクボードは、10年分の旅のハガキにあっという間に埋もれてしまって、もう3枚目。

道内の辺鄙な田舎、友だちと訪れた観光地、卒業旅行に行った海外。

静かな雪原、美しい夜景、川沿いの街並み、城の見える城下町、青い海に白い空。

それら風景やら、思いのままに綴った旅の感想やらをまじまじと見返すことはありません。でも、わたしが暮らす北海道の左上からは到底想像し得ない風景が、わたしの寝室にはまるで、小さな窓のようにひしめいていて、そのひとつひとつから、時折風が吹き込んでくる気がするのです。

雪をはらんだ冷たい風が、湿っぽい夜の風が、川のせせらぎをのせた風が、爽やかな春の風が、日本とは違うにおいの風が、北海道の左上のわたしの寝室に、ふうと静かに吹き込むのでした。

 

旅先から送る、自分宛のハガキ。

それは、旅の思い出と余韻、そして日々を懸命に生き抜くわたしに心地良い風を運ぶ、大切なコレクションです。

 

今週のお題「わたしのコレクション」