ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

おわってほしくない夜

「ピザつくるから来ない?」

友だちに誘われ、いつもお邪魔している彼女の家へ。勝手知ったる玄関を開けると、男女さまざまな靴が並んでいます。居間のドアからわいわいと声がもれていて、多くひとが集まっているのがわかりました。来ると聞かされていたメンバーの倍はあるであろう靴の数から、誰が来ているんだろうとわくわくします。そっとドアを開け、冗談半分に隙間から中をのぞくと…知らない顔と目があいました。

あれ?

思わず、扉を閉めます。わたしが開けたドアの正面に座っていた2人。そのどちらも知らない顔でした。呼んでくれた彼女とわたしは交友関係もかぶっているので、てっきり知り合いばかりの会かと思っていたけれど…息を吸って、はいて、改めて扉を開けました。

 

はじめましては苦手じゃないけれど、やっぱり少し、心持ちがちがいます。それが多い会だとなおさら。どこに座って、誰に耳を傾けて、なんの話をするか、頭がフル回転。でもやっぱり、美味しいものを食べてお酒を飲んでワハハと笑えば、結局楽しいのでした。

 

ぐるりと大きな輪をつくって、誰かの話を聞きながらわたしの話もして。楽しいこともちょっぴり辛かったことも笑い飛ばして。そうしていると、時計の針はずいぶん足早に進んでいきます。もう1時間、もう2時間、あと1時間、あと30分。時計の針がちょうどてっぺんで重なったころ、誰かが名残惜しそうに口を開きました。

「そろそろ片付けようか」

「そうだね、これから2時間かけて帰るひともいるしね」

「泊まっていけばいいのに」

「また近いうちにやってな!」

おわってほしくない夜。

みんなが、そう願っているのがわかる夜。

わたしも名残惜しくコップに残ったお酒を飲み干します。わたしたちは、おわってほしくない夜を重ねて生きるのでした。