ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

お酒を飲みながら映画

ドロドロに疲れた夜は、お酒を飲みながら映画を見たいと思います。

平日、昼下がりの職場。行き詰まって頭を掻いていると、電話が1本。よくない電話です。いよいよ本当に上手くいかなくて、じゃあプライベートならどうなのと問えば、やっぱりちっとも順調じゃありません。大人しく1人帰宅した夜、「ただいま」と「疲れた」がごっちゃになって口からこぼれ、寝る支度さえ億劫になります。そんな日は、お酒を飲みながら映画を見るのです。

 

選ぶのは、20代後半の女性が主人公の人間ドラマ。これが、ひとくちに説明できるような明快なストーリーではないし、爽快なハッピーエンドかと問わられれば首をひねってしまいます。けれど、彼女が自らの人生に向き合って、笑って泣いて、最後には涼やかな風と陽の光をうけて微笑む、その様がたまらなく好きなのでした。ささくれだった心の隅々まで浸透するような、透明なあたたかさのある作品でした。

 

「ドロドロに疲れて帰ったら、いち早く眠りたいよ」

多くのひとは言います。

「そんな頭をつかうようなはなし、疲れているときに見たくない」

とも言われます。

けれどわたしは、この作品を、そんなタイミングで見るからこそ感じ入るものがあると思うのです。

ひどく疲れているというのに、明日からまた踏ん張らなければならない夜。1人きりの部屋で見る映画。運命という抗い難いものに翻弄されながら、それでも美しく笑う彼女に自らを重ねて、わたしもそうありたいと思うのです。

 

ドロドロに疲れた夜。

もうひと踏ん張りしなければならない夜。

お酒を飲みながら、映画を見ます。