日々の余白に
日々の余白に、文章がしゅるんとはまり込む。いえ、生まれるといった方が近いでしょうか。うん、溜まるといった方が良いかもしれません。部屋の隅に溜まっていく埃のように、誰にも気づかれず積み重なって、ようやくカタチになったとき人目に触れる、みたいな。
そうすると、わたしはいま、その余白がないのでしょう。
来年、独立しようと思っています。新卒から5年勤めた会社を辞めて、異業種に挑戦します。挑戦するなら体力のあるうちにって聞くし、20代ならやり直しがきくって言うし。
本当は、1人で世界1周とかヒッチハイクで日本縦断とか、海外移住とか住み込みバイトとかやってみたかったけれど、やらずに20代を折り返しました。時間を弄んだ大学時代、安定してお金が入った会社員時代、やろうと思えばやれたけれど、やりませんでした。だからこの独立は、わたしの、20代までの人生の精算なのだと思います。
とはいえ、きちんと準備をします。わたしはそこまで、無鉄砲な人間にはなれませんでした。勤めている会社にきちんと相談し、退職日程を決め、周囲に話をして、仲間を見つけ、いまは平日を会社員として、週末は来年から始める仕事の修行としてアルバイトをしています。並行して、独立のための準備をします。すると、あまりに時間と体力がないことに気づきました。
朝起きてシャワーを浴びながら「疲れた」とこぼし、夜ようやく潜り込んだベッドで最上の幸せを感じます。余裕のなさを露呈することが嫌なので、周囲に悟られないように暮らしていますが、内側はパンパン。膨れ上がった疲労か不安かよくわからないものに押しつぶされそうです。そうすると、文章がまったく溜まらないのでした。
日々の余白で溜まりカタチをなす文章が、溜まる前に蹴散らされてまとまりません。暮らしの逃げ場所として、本当にやりたいこととして、書いているはずなのに。
これはいけないと思いながら、明日もバイトです。