ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

本を読む子ども、読まない大人

わたしは、本を読む子どもでした。

おこづかいシステムはなかったけれど本をよく買ってもらったし、親戚のおばさんがくれるのはいつも図書カード。重たいハードカバーの冒険小説をカバンに入れて「ただでさえ教科書や資料集で重いのに…」と母に呆れられながら学校に通いました。

小学生のころに刊行されていたのが「ハリー・ポッター」や「ダレン・シャン」シリーズ。手を伸ばしても届かないファンタジーの世界は、不思議なリアリティでわたしの心を鷲掴みにしました。1年に1度新刊が出るか出ないかの冒険小説の合間を埋めたのは、手のひらサイズの文庫本。こちらも、ミステリ系のちょっと不思議なフィクション作品を好んで読みました。

そもそも、漫画を読む子どもだったのです。父が漫画好きで、実家の本棚には父が幼少期から集めた漫画がズラリと並べられていました。わたしは父のマネをして、1冊選んでごろんと横になり、絵と文字を見比べました。

 

そんなわたしも、今では全くといっていいほど本を読みません。高校、大学と進学するにつれ、本を読まない子どもになってしまいました。いつもカバンには1冊入っているけれど、そのタイトルがかわるのは2、3ヶ月に1度、半年に1度、と頻度が減っていきました。

 

きっと、外の世界の面白さに気づいたのだと思います。

 

高校で隣町へ、大学で都心へ、そして就職で北海道の左上へ。世界が広がるにつれ、本が連れ出してくれた世界以上に広く興味深く、この上なくリアルな世界を知りました。フィクションの世界で生きていた彼ら、彼女らと変わらない、もしくはそれ以上の世界を、わたし自身が主人公として味わっています。

 

わたしは今や、本を読まない大人です。でも、知らない世界を覗いて探究したいという気持ちは、冒険小説にハマっていた子どものころから変わりません。