ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

派閥

わたしは、TSUTAYA派でした。大学生のころ映画にハマり、DVDを借りにいつも決まって行ったのは大通りのTSUTAYAさん。広い店内に、この世のすべての映画を集めたというような数のDVDが所狭しと並べられていました。就職のために引っ越した田舎町にもTSUTAYAとゲオがそれぞれあって、でも、大学時代の名残からTSUTAYAさんに通っていました。どこか薄暗くて、店員さんの愛想も決して良いとは言えなくて、でも、品揃えのいいTSUTAYAさん。それが、つい先日閉店しました。

 

仕方がないので、ゲオに行きました。机の奥底に落ちていたポンタカードを財布に入れて、明るくて、店員さんが朗らかで、でも、品揃えがちょっと物足りないゲオ。5枚借りて帰ってきました。レンタルバッグは、TSUTAYAさんのような持ち手のついた手提げではなく、くるんと中身を包むようにフラップをマジックテープでとめて小脇に抱えるセカンドバッグ。ぴいん、と頭の奥で高い音がするように、記憶が蘇りました。

 

それは、わたしがまだ3歳だったとき。

父が借りてきたビデオ。当時はレンタルビデオでした。わたしはそれを、延々と見ています。アニメ映画の90分。再生終了したら巻き戻して、デッキから取り出し、新しいビデオを差込みます。妹が生まれるとき、母は病院で、父と2人きりの夜でした。日中の疲れからか、隣に寝そべって腕を枕にいびきをかく父。しいんとした夜の淵、背中に父の温もりを感じながら、ただただテレビを眺めていました。新しいビデオを取り出すのは、持ち手のついた手提げからではなく、フラップがマジックテープでとめられた、セカンドバッグでした。

 

わたしは、TSUTAYA派でした。でも、かつてはゲオ派だったのかもしれません。