ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

わたしは、

わたしはいつも、ちょっぴりお喋りが過ぎます。口数が多いとか、大きな声を出すとかではありません(もしかしたらそれらもあるかもしれません)。大仰な言葉を使ってしまうのです。もっともらしく綺麗な文章で喋りたて、聞いている人はなるほどと頷いて、ほうと感嘆を漏らして、「あいちゃんはすごいね」と言って少し遠くにいってしまいます。わたしはいつも、ちょっぴりお喋りが過ぎます。

 

わたしはこれを、なおさなければなりません。淑やかに分をわきまえて、必要以上のことを垂れてはいけません。でも、好きなものとか信じることとか力を注いでいることの話になると、いつも力が入ってしまい加減ができなくなるのです。わたしはこれを、なおさなければなりません。

 

先日、いつもお世話になっている飲み屋のマスターが取材を受けていました。自分が取材をすることはあれど傍から聞くことはなかったので、そっと大人しくしていました。

マスターが、インタビュアーの質問に答えます。お店のこと、メニューのこと、マスター自身のこと。お世話になりはじめて5年になるわたしも知らなかったこと。

「ありがとうございました」

そうしてインタビュアーが帰っていく後ろ姿を見送りながら、わたしは、喉の奥でつかえる言葉を飲み込みました。

 

わたしは知っています。

お店の素晴らしさ、メニューの奥深さ、マスターの熱い想い。それらは、マスターの口から語られなければインタビュアーには伝わりません。けれどマスターは、わたしの知らない他所行きの顔をして、かしこまった文法で整った文章を連ねるばかり。マスターの魅力は、こんなもんじゃありません。わたしが言葉にできたなら、それをインタビュアーに伝えられたなら、どれほど良かったでしょう。

 

わたしはいつも、ちょっぴりお喋りが過ぎます。

わたしはこれを、なおさなければなりません。

でも、なおさなくても良いのかも、と時々思ったりもするのです。