ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

実家に2週間

「あいの言い方、キツイんだもん」

お盆休みを過ごしていた実家でコロナの感染が発覚し、37.9°から38.9°の絶妙な発熱のなかで、絶妙に迫りくる仕事の納期に追われながら母に言われた言葉です。なんだかもう、このコロナ菌を保持したまま家を飛び出して、そこらじゅう構わず振りまいてやろうかと思いました。いえ、そんな度胸ありませんから、せめてひとりぼっちの北海道の左上の一軒家に、帰ってしまいたくなりました。

 

家族のなかで、まずはわたしの発熱からコロナ感染が発覚し、2日ほどあけて母と妹もコロナの診断を受けました。わたしは発熱で2日ほどダウンしていたけれど、わたしより妹、妹より母の症状が軽く、母は終始わたしの食欲やら体温やらを気にしてくれていました。しかしわたしは自分の体調以上に、ようやく軌道に乗ってきた仕事の納期が気がかりで、まわらない頭で小学生以来ぶりの勉強机に座り、ズキズキと痛む眉間に冷えピタを貼りながらパソコンをガチャガチャいわせていました。母は氷枕を片手に部屋に入ってきて、その様子を認めるとなんだか言ったようですが、なんと言われたか記憶にありません。そして仕事がひと段落して居間に降りていくと、冒頭の言葉。

「こっちはコミュニケーションをとろうとしてるのに、なんでそんな言い方しかできないの?」

コロナ菌に侵され、痛む頭を抱えながら仕事をするわたしは、正直コミュニケーションの余裕なんてありません。そのときは、なんて無慈悲な母親だと頭をさらに痛めたものですが、しかし母だって熱はないにしても気怠い身体でわたしたち家族の世話を焼いてくれているのです。そう考えると、わたしも配慮が足りなかったような気がします。

「おかあさん!わたし体調悪いの!」

しかしそのあと、ヒステリックに叫ぶ妹の声を階下から聞き、まあわたしの配慮も足りなければ母も大概なのだと安心しました。

 

きょうから北海道の左上に帰ってきています。ひろい一軒家にひとりぼっち。朝から晩まで仕事をしていても、夜にきちんと風呂に入らなくても、力尽きてそのへんで寝ても、誰も何も言いません。それがちょっぴり寂しいと思うので、やっぱり、実家に2週間は長過ぎました。