ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

夜の一員

実家に帰ったとき、妹とスーパーに行きました。

彼女の仕事終わりを待って出かけたカラオケ。満足して帰るころには日付をまたいで、わたしは安いお酒で程よく酔っぱらっていました。ハンドルを握る妹に「お酒を買って帰ろう、スーパーに寄ろう」とせがみ、彼女は「はいはい」と言って24時間スーパーの駐車場に車を滑りこませました。

 

品出しの台車が狭い通路をさらに狭くしています。お惣菜やら鮮魚やら一部の棚はすっからかんで照明が落とされ、そこから店内を飲み込むようにぽっかり暗く口を開けていました。夜のスーパー。それでも、人はいます。

 

わたしは普段、あまり人の顔を見ていません。仕事で関わりがある程度の人と、プライベートタイムにお店や公共施設で目があってしまうことほど持て余すことはないでしょう。挨拶するにしても、二言三言かわす会話をどうすればいいかわからないし、「それじゃあ…」と別れた後にレジなんかで再会したらサイアク。それなら、俯いてただ商品だけを吟味して歩いたほうが良いのです。

でも、その日はめったに来ない地元のスーパー。しかも深夜。加えてわたしは酔っぱらっています。すれ違う人、向こうで品物を物色する背中、棚の間から垣間見える頭を見ていました。若い人もいました。高齢の方もいました。男女もいたし、親子もいました。でも、みな一様に俯いて、会話する声も小さくて、まるで、スーパーの隅っこの暗くなっているところに潜む何かに気付かれないようにしているようでした。彼らは、夜の一員でした。

 

深夜であったためかもしれません。

わたしが飲酒していたせいで、対照的に映ったのかもしれません。

でも、昼間に比べてあまりに異質なその場所に、夜というものは大型のスーパーの中にさえしのびこむのかと驚きました。そしておそらく、わたしが仕事終わりに足を運ぶスーパーでも、わたしの様相は彼らと変わらず、夜の一員であるのだと思います。