ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

夜の準備

北海道の冬に、さっぱりと青空なんてことは稀です。いつも空一面雲に覆われていて、それが薄いか厚いかのちがい。薄ければ太陽が透けて差しますから、割合あかるく、雪が反射して視界が白っぽくキラキラします。しかし厚い雲がかかると、日光が遮断され黄みっぽく、気づいたときには夜。きょうは、そんな日でした。

 

15時をすぎたころ、少し歩こうとマフラーをぐるぐる巻きにして外へ出ると、すでに太陽は森の向こう。雲にさえぎられた日光は黄色を帯びて、それも届かない木の影や隅っこのほうは青っぽく沈んでいます。ざくざくざくと1メートルほど歩いたところで、案外深い雪かさにぎょっとしました。靴裏がじんわり冷たくなっていくのを確かに感じますが、まあ、大丈夫でしょう。1時間ほど、木の下や丘の上を歩いてカフェへ。日の入りは16時前なので、その窓際の席で、日暮れを待とうという算段です。

 

席について窓の外を見ると、青が隅のほうからじわじわと漏れだしていて、森の木々なんてもう真っ黒。ああ、こうやって夜がやってくるのを見張ってやるのです。すると、注文したカフェオレがもこもこと立派な泡を携えてきました。しっかりと香るミルクを堪能していたら、まあ。夜はゆっくり、ゆっくりと忍び寄っているというのに、カフェ店内のオレンジ色の明かりが窓に反射して、どうにも観察に適しません。じっくり目を凝らすけれど、カウンターに吊られたランプとか、天井をはしる梁とか、ソファ席で楽しげにおしゃべりするおばさま方の姿を、窓が鏡のように反射させているのでした。窓一枚隔てたこちらはもうすっかり夜の準備ができていて、打ち勝って明るいのでした。

 

せっかく夜を見張ってやろうと窓際の席に陣取ったけれど、仕方がありません。カフェオレのもこもこをすっかり飲み干して、店を後にしました。

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