ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

人生ゲーム

実家には、人生ゲームがあります。

ボードゲームのそれは、小学4年生のころにもらったクリスマスプレゼントでした。当時、友だちの家でテレビゲームをさせてもらっていて、ゲームキューブの人生ゲームソフトが大変面白く、わたしも欲しいと思いました。しかし我が家には、ゲームキューブ本体がありません。ゲーム機とそのソフトなんて、一体いくらするのでしょう。天下のサンタさんとはいえ畏れ多く、仕方なしにお願いしたのが「ボードゲーム版人生ゲーム」だったのです。

 

クリスマスパーティーのさなか。ドンっと大きな音がしたと思ったら、父が素知らぬ顔で玄関の方を見やっています。もしやと思って、妹と2人、我先にと玄関先に駆けつけると、煌びやかなラッピングのクリスマスプレゼント。

人生ゲームの入った袋は特別に大きくて、包装紙を半ば破るようにして広げます。そうして、4人家族の我が家で、クリスマスの夜、人生ゲームに興じたのでした。

父がルーレットを回して、母が駒を進めます。わたしが銀行役で紙幣を配って、妹が興味深そうに見つめます。その時間こそが、当時小学生のわたしにとっては貴重でした。母は「姉妹で遊んでいなさい」という人だったし、父は残業で毎日帰りが遅く、「父と母が一緒に遊んでくれる」ということが、何より嬉しかったのです。その年から、クリスマスの夜は「プレゼントがもらえる」「ご馳走とケーキが食べられる」に加えて、「家族みんなで遊べる」特別な夜になりました。

 

いまでも、お正月なんかに人生ゲームを引っ張り出します。ピンの壊れたルーレット、端の折れた紙幣、コースを覚えきった盤だけれど、それは、わたしたち家族の特別な時間です。