ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

おなかが痛くなるほど

おなかが痛くなるほど笑ったのは、いつでしょう。

確か、中学3年生のとき。すでに部活を引退して、でも帰って勉強したくなくて、ダラダラと残っていた放課後の教室。当時すごく気のあった友だちと何とはない話をして、おなかを抱えて笑ったのが最後だと思います。「お互い受験に落ちたら吉本興業の養成所に入ろう」なんて言った友だちで、コンビを組んで漫才をやろうと思う程に息が合いましたが、今ではすっかり疎遠です。受験に落ちずに、軽はずみな気持ちでコンビを組まずによかった。

でも当時は本当に楽しくて、彼女と笑う放課後が、部活より休日より待ち遠しく感じられました。おなかが痛くなるほど、笑いました。

 

それから高校、大学と進学して、就職しました。その時々に気の合う友だちがいて、中学時代の彼女より連絡をとりあっています。でも、おなかが痛くなるほど、腹が捩り切れるんじゃないかと思うほど笑うことはありませんでした。

 

2022年、正月。

実家に帰省して、みんなでごはんを食べました。惰性でついているテレビはだらだらとして、つまらなくて家族の顔を見回しました。妹が視線に気付いて、「ゲームする?」なんて言いました。

一昨年だったかに流行った「はぁっていうゲーム」。父も母も妹さえも知らなくて、わたしがカードを配りルールを説明してお題を読み上げます。笑いました。父の真剣な表情、母のちょっと抜けたところ、妹のサービス精神旺盛なふるまいは、普段暮らしていては見ることのない様でした。意外で、そして、余計な何事をも考えることなく、笑いました。

 

交友関係とか、上下関係とか、場の空気とか環境とか。わたしたちは随分いろんなものを意識して暮らしています。笑いひとつにとってもそう。放課後、何者にも咎められることなく笑ったあの日を、腹の筋肉が引き攣るようにぎゅうっと痛むのを感じながら、思い出しました。