ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ひとり飲み

飲み屋さんに行くのが好きです。美味しい食べ物に美味しいお酒、誰も彼もが上機嫌で、帰り道の風さえ心地良い。

でも、1人なら気が引けてしまいます。ウイルス禍にお客さんやマスターとのおしゃべりはできないし、スマホをいじるくらいしかやることがないし、まがりなりにも20代半ば、人目が気になります。ほうぼうに気をやりながらお酒を飲むくらいなら、家でひとり発泡酒をあおったほうがマシでした。

 

しかし、旅先なら。

見知らぬ地域、見知らぬ人、せっかくなら、未だ知らぬ美味しいものに出会いたいと思います。宿泊先のホテルを出ると、街には案外ひとがいて、道には店からもれるあかりが明るく、誰も彼も、わたしのことなど気に留めていませんでした。小路をあちらこちらへ行ったり来たり、気のすむまで街を見まわして、ここだ!というお店の引き戸を開けると、「いらっしゃいませ!」の声。美味しい食べ物に美味しいお酒、誰も彼もが上機嫌。帰り道には、さっき通らなかった道を行き、突如あらわれたアーケードのすっかり降りたシャッター街で、たまたま開いていた喫茶店の店先に繋がれた犬を撫でて、帰りました。

 

きっと、誰かと一緒なら違ったでしょう。1時間も夜の街を探検しなかったでしょうし、店内の賑やかな声に耳を傾けることもなかったでしょう。食べたいもの飲みたいお酒も一緒の誰かにあわせて遠慮したでしょうし、帰り道たまたま見つけた商店街で犬を撫でることもなかったでしょう。ひとりだから、できました。

そう考えると、ひとり飲みもまあ、悪くないと思います。

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