ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

おはなしできない

毎年この時期は、春から小学生になる地域の子どもたちにインタビューします。お名前、1年生になったら楽しみなこと、将来の夢。150人前後の子どもたちへのインタビューは十人十色、子どもらしさや時代を感じる回答もあって、楽しみな仕事の1つです。

 

「お名前を教えてください」

質問して、レコーダーを向けて、答えてを待ちます。

びっくりするくらいハキハキと話す子もいれば、もじもじと、なかなかはっきりお話しできない子もいます。でも、「上手!」とか「ばっちり!」とか質問ごとにコメントすると自信をつけて、声が大きく、発音がはっきりと、まっすぐ目を見て話すようになるのでした。つまり、インタビューの出来は、インタビュアーの腕にかかっているのです。

 

「…ごめんね、もう1回おしえて?」

だから、この日の失敗は、すべてわたしの至らなさ故。

子どもたちの名簿をあらかじめ先生からいただくのだけれど、名前の読み方が難しく、本人に聞けども声が小さく、聞き返すこと3回目…ついにその子は、口をつぐんでしまいました。先生が助け舟を出して「ほら、〇〇ちゃん、もっと大きな声でるよ」という声かけでようやくお名前を把握して「〇〇ちゃん、上手だよ、もう1回言ってみようか」なんて促しても、後の祭り。結局順番を後にまわして、みんな終わったあとに再チャレンジして、なんとかインタビューを終えました。わたしは、今年1番の自責の念にかられました。

 

最適なインタビューができなかったことはもちろん悔しい。けれどそれ以上に、何度も名前を聞き返された彼女は、どんな気持ちだったろうと考えると、胸が張り裂ける思いでした。見知らぬ大人を前に、勇気を出して発言したのに、何度も聞き返されてしまったこと。先生含め、大人2人に囲まれて「どうして言えないの?」と問われてしまったこと。そして、もしかしたら彼女にとって、名前を聞き返される経験が今回ばかりではないかもしれないこと。

そう考えると、インタビュアーという立場以上に1人の大人として、してはいけないことをしてしまったという気持ちになりました。どうか彼女が今日のことをすっかり忘れて、明日からまた自信を持って、自分の名前を大きな声ではっきり言えますように。そう願わずには居られません。