ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

友だちのはじまり

「いつからこんなに仲良くなったんだろうね」

お酒が入るうち、そんな話をすることがあります。「ほら、あのとき」とか「あそこであなたが」とか、すぐに答えられる友人もいれば、しばらく悩んで「なんでだっけね」と笑って終わる友だちもいます。

 

「誕生日、4日ちがいです。しかも同い年」

ケータイショップで対応してくれた女性。綺麗なグラデーションがつくられた目元が印象的で、マスクをしながらでも、朗らかに笑っていることがわかりました。田舎町では、同い年を見つけるのは至難の業。わたしは北海道の左上暮らしがもうじき6年目になりますが、ぴったり同い年は3人しか出会ったことがありません。

「えっそうなんですか!早生まれ!」

話すうちに、年齢、誕生日ばかりでなく、独身で最近転職したといいます。わたしたちはわずか15分でこれだけの情報を交換し、笑いました。パーテーションで区切られた2つ向こうでは、いかにも営業といった落ち着いた声色の男性と親子のお客さんが話しをするのが聞こえています。しかし、わたしたちがお構いなしに声をあげて笑うものだから、ここはケータイショップではなく、街中にある雑多なカフェなのかと思いました。

「来月、この日にまた出勤なんですけど」

彼女が裏へ戻ってシフトを確認してきて、わたしも

「ではその日にまた。今度は夜、飲みにでも」

というと

「ぜひ!」

と言って綺麗な目元を細めました。わたしたちは来月、飲みに行くでしょう。

 

こんな稀有な出会いもありながら、ときには深くときには浅く、出会いと別れを繰り返して「友だち」をやっています。どんな出会いであろうと構いません。ただ、お酒のアテに「わたしたちはどこで出会ったのか」くらい、ちゃんと覚えておこうと思います。