ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

誰も傷つけないツッコミを

中学生のころ、お笑い芸人を目指していました。半分冗談で、半分は本気。当時仲のよかった友だちと、地域で1番偏差値の高い高校を志望して「もしダメだったら札幌吉本の門戸を叩こう」と約束したのでした。それほど、わたしたち2人は何気ない会話を重ねて、おなかを抱えて笑いました。放課後の西陽が差し込む教室で、野球部が廊下を走るキュッキュッという靴音を聞きながら、それに対抗するように笑い声をあげました。おなかが痛くなるほど、声が枯れるほど笑いました。

 

だから、その言葉はわたしの胸に重くのしかかりました。

 

「否定しないでよ」

男友だちと会話していたときのこと。楽しくかけあいをしていたと記憶していますが、彼は急に黙りこくって、神妙な面持ちになったと思うと小さく口を開きました。

もちろん、彼の言を否定したつもりはありません。ただ彼の話がより面白くなればと思って、いわゆる「ツッコミ」をしていたつもりでした。それが彼にとって「否定」だったとは。反省。

 

たまに、苦手なお笑い芸人さんがいます。トークは面白くて好印象なのに、なんだか漫才はトゲが感じられて聞いていられない芸人さん。なにが引っかかるのかと疑問に思っていましたが、そうか、彼らのツッコミは「否定」なのでした。

 

コンプライアンスやらにうるさい世の中ですし、うるさくなくても、誰かを傷つけるようなお笑いがあってはならないと思います。わたしも否定ではなく、正しく「ツッコミ」をしなければなりません。仮にも、お笑い芸人を目指した者として。