ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

最近の悩み

「ひさしぶり。覚えていますか?」

ひかえめなメッセージ。インスタでもツイッターでもなく、フェイスブックメッセンジャーでした。

「たまたまあいちゃんの投稿を見つけて、懐かしくなってメッセージしてしまいました。迷惑だったらごめんなさい…」

小学校6年間が一緒だった女の子。中学進学で別れて以来、顔を合わせたことも言葉を交わしたこともありません。家が近所だったので6年間関わりつづけてきたけれど、正直、あまりよい思い出はありません。いわゆる「女の子の人間関係」を、わたしはその子から学びました。

「いまのあいちゃんとぜひお話ししてみたいです」

あーこの感じ。わたしは大きく息を吸って、そして吐きました。

 

わたしだってそれなりに27年生きてきました。

中学のとき同じ美術部だった、線の細い女の子。彼女が病気で1年休学してしまい、めっきり会うことがなくなりました。つぎに彼女の名前を見たのは社会人になって2年目の夏。彼女から暑中見舞いのハガキが届きました。簡素なハガキには彼女らしい端正な文字が並び、ひさしぶりに会いたいと書かれていました。ハガキには、保険会社の名前が印字されていました。

大学生のとき、ホームパーティーやらアウトドアやらに誘ってくれる30代半ばのご夫婦としりあいました。催しごとにメンバーや世代が異なるので面白く、誘われればどこでも向かいました。5回目のホームパーティーで、きょうは誰がいるのだろうと胸を躍らせながら行くと、わたしとご夫婦の3人きり。食後に始まったのは、あるブランドの実演販売でした。

 

わたしだってそれなりに27年生きてきたのです。突然にきた昔の友だちからの連絡。保険かマルチか宗教か自己啓発セミナーかと、考えをめぐらせます。

「えっ、ひさしぶり!!!いまどこでなにしてるの?」

返信しない選択肢もありました。でもわたしは好奇心でできた人間です。

「えーん、返信くれてありがとう!本当に緊張しながら送ったから…」

さて、いつ本当の目的を告げてくるのか。

 

「実は、いま東京に来てる!」

そうして続いているメッセージは、かれこれ1ヶ月ちょっと。まだ彼女は、保険に入っているか?とか、すごくよい商品があるだとか、悩んでいることはないか?とか、すごいと評判の人を紹介したりだとかすることはありません。ただ、きょうも彼女とわたしの他愛のないメッセージがつづいています。